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プロジェクトマネジメント全般に関するコラム

第9回:Linuxという奇跡

 

 

第6回「Company2.0宣言」、第7回「サン・マイクロ総研で議論された「Shain2.0」」、第8回「会社と個人との間のパラダイムシフト」、と3回に渡ってこのコラムにて、「会社とは何なのか?」「個人と会社との関係はどうなっているのか?」を考えてきました。

これまでいろいろと言ってきた事をもう一度別の表現に言い換えると、「そろそろ、『会社という旗印の下で仕事をしないと、ちゃんとした仕事ができない』とか『大きな仕事(成果)は、会社という形態からでないと生み出されない』という常識を疑ってみようよ。」という感じかと思います。

 

それについては、「やっぱり会社じゃないと、大きなことはできない。」という考えが根強くあることは事実だし、「実際に、会社でない組織が大きな仕事を成し遂げた例って何かあるんですか?」と言われると、残念ながら多くの例を示すことができないのも事実です。

 

しかし、「多くの事実」は無いのですが、私達は「奇跡かもしれない“一つの大きな”事実」を知っています。

 

それは、「Linux」です。

 

元々「Linux」は、1991年頃、当時フィンランドのヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズ (Linus Torvalds) 氏が個人で開発を開始したOSでした。それを、トーバルズ氏がメーリングリスト上で公開し、一定のライセンスルール(GPLライセンスと言われる方法)の下で利用可能にすることにしたことから、“ただで、すぐに使え、より優れたOS”を求める人々による改良が次々と始まり、数年でビジネスにも利用されるOSに成長しました。

今では、ビジネスで使われるコンピュータのOS(主にサーバOS)として一翼を担っています。

 

トーバルズ氏が「Linux」の開発を開始した時、あるいは、それがメーリングリストに公開された時、このOSが今のような成長を成し遂げると想像した人がどれほど居たでしょうか?

否定的な考えの方が主流だったのでは、と想像されます。

しかし、トーバルズ氏自身は、「世界中の自分と同じ欲求を持つプログラマーがネット上に集まれば、きっと優れた自分達のためのフリーOSが完成するはずだ。」と考え、地道な調整とコミュニティーの成長に力を注ぎ続け、そして結果的に皆の想像を越えた大きな成果を手にした訳です。

 

この現象は、ソフトウェア開発における一つの「パラダイムシフト」だった、と言えるのだと思います。

 

そして、ある意味「Linux」開発の本質を表しているとも言える、もう一つの結果がトーバルズ氏のその後の活動です。 彼は現在、Open Source Development Labsの一職員(肩書きは“フェロー”)であり、公式のLinuxカーネルの最終調整役(「優しい独裁者(終身)」)を続けているそうです。

 

あれだけの物を作り上げる中心に居ながら、巨万の富を築くことも、企業を興すこともなかった。もちろんトーバルズ氏だけでなく、その改良に関わった世界中のプログラマーもその作業から金銭としての利益を得ようとはしなかった。

 

私達は、多くの人が集い、何か活動をし、何かを作り上げていく、というプロセスの裏側には、それを利用し、個人の利益(あるいは特定の組織の利益)を追求し、権力を得ようとする、存在に薄々気付いていて、漠然と「世の中って、そんなものだよね。」と思っているような気がします。

でも、本当にそうなのか?、変えることはできないのか?、「Linux」の成功は私達の指針にならないのか?、と考えてみたいと思うのです。

 

「Linux」のような成功事例がそう簡単に生まれないことを考えれば、「Linux」は確かに奇跡に近いものなのかもしれません。

 

が、一度起こった「パラダイムシフト」は、長い目で見れば、必ず大きく世の中がシフトしていく前兆であるケースが多いのことも事実なのです。

 

 

 

 

 

 

 

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