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プロジェクトマネジメント全般に関するコラム

第10回:経営者とは何をする人なのか?

 

 

2000年10月に独立しピアーズ社を設立するまで、私はマイクロソフト社のコンサルティング本部でマネージャーをしていました。

マイクロソフト社には、中間採用で入社した訳ですが、入社後直ぐに受講させられたコンサルタント向けの社内セミナーがありました。 「MS101」と呼ばれるセミナーです。

 

セミナーに番号を付けて呼ぶ方式はアメリカの企業や大学では良く見かける方式で、通常、最初のアルファベット2桁はセミナーの種類を表しています。例えば、データベースのセミナーなら「DB」、ネットワークのセミナーなら「NW」という感じで付けられます。「MS」というのは、もちろんマイクロソフトのことで、「会社に関するセミナー」を意味します。

次に百の位の1桁が、難易度を表します、基本コースなら「1」になります。

十の位と一の位の2桁は、通し番号です。

 

従って「MS101」とは、マイクロソフトについて従業員(コンサルタント)に、一番初めに知っておいて欲しい基本的な事を教えるセミナー、という位置付けのものになります。

 

数日間のセミナーでしたが、講師はアメリカ人で、セミナーの進め方も洗練されていて、説明も面白く、充実した内容でした。

そして、そのセミナーの中で今でもハッキリと覚えている非常に印象の強いコンテンツがありました。それは、会社の各階層に対する、「“誰に”対して“何を”売るのか」という定義についてでした。

 

マイクロソフトでは、「社内の各階層に対して、あなたは(あなたの仕事は)“誰に”対して“何を”売るのか(売る仕事なのか)」を明確に定義しているので、それをちゃんと理解して仕事に望むように、という内容です。

 

例えば、現場の技術コンサルタントならば、「“顧客企業の技術担当および技術リーダー”に対して、“マイクロソフトの特定の技術とその活用方法や有効性”を売る」という定義になります。 コンサルタントのマネージャーならば、「“顧客企業のシステム部門長”に対して、“マイクロソフト技術全体や製品の有効性と将来性”を売る」という定義になる、といった感じです。

 

では、ビル・ゲイツは「“誰に”対して“何を”売る」ということになっていると思いますか?

 

この答えに、とても感心したのですが、ビル・ゲイツは「“市場”に対して、“マイクロソフトのブランドとブランドイメージ”を売る」と定義されていたのです。

 

この定義は、経営者とは何なのか、何をする人なのか、を明確に表現しており、ある意味その単純明快さに衝撃を覚えました。 会社の経営者とは、“市場”に対して、“会社のブランドとブランドイメージ”を売る人で、極端に言えば、それが出来なければ経営者として失格である(経営者である資格がない)ということ、なのです。

 

最近、企業の不祥事のニュースをよく耳にします。

 

不祥事を起こした企業の経営者が、お詫びの記者会見でぼそぼそと喋っている姿をテレビで目にする度に、「MS101」で習った「会社の経営者とは、“市場”に対して、“会社のブランドとブランドイメージ”を売る人なのだ」という言葉を逆説的に思い出します。

 

彼らは、「“誰”に対して“何を”売るつもり」で経営者をやっているのだろうか?

“市場”に対して、“会社のブランドとブランドイメージ”を売る能力が無いのに、経営者として資格があると思っているのだろうか?

この経営者は、どんな理由で経営者として会社を統率する立場になったのだろうか? “誰”に対して“何を”売る能力が評価されて経営者になったのだろうか?

 

記者会見の見ながら様々な疑問が湧いてきます。

不祥事はたまたま発生したのかもしれませんし、あのような経営者だからこそ、不祥事が起こる体質の会社になったのかもしれません。

 

が、記者会見の度に同じような疑問を感じてしまう現状を考えると、不祥事を起こす起こさないに係わらず、日本企業の経営者の現状が似たり寄ったりなのではないか、と勘ぐりたくなります。

 

だたしこれには、「“市場”に対して、“会社のブランドとブランドイメージ”を売る」ということだけを、誤った形(「社会に対する健全な貢献」という基本的な前提を見失った形)で実行することの危険性に関する問題もはらんでいます。

「“市場”に対して、嘘(実態以上)の“会社のブランドとブランドイメージ”を騙し売る」という不正行為に繋がる危険性があることも忘れてはいけません。

 

会社を経営することとは何なのか? 経営者の資格とは何ができることなのか? 会社とは何なのか?

 

我々はもう一度、よく考えてみる必要があるのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

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